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【携帯市場コラム】中古スマホは本当に値上がりするのか?

Date 2022/05/02
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ニューズドテックでは、有識者によるコラム、業界人を対象とした取材記事を定期的に配信する「ニューズドマガジン」を開始しました。導入を検討している企業・法人向けに、これまでに導入した法人事例、導入事例なども配信します。

中古スマホを検品するニューズドテックのスタッフ

中古スマートフォン市場は年間200万台規模にまで成長しており、今後も一段と拡大するとみられている。背景には、スマホ関連の出費を少なく抑えたい、という消費者のマインドがある。
 このため、格安SIMとの組み合わせで利用するユーザーが多い。2台目の端末としての利用も多い。多くの機能や性能を求めない傾向が強い高齢者の利用も多い。そして近年は、法人での利用が伸びている。そんな中古スマホの最大のメリットであり魅力である“価格”の先行きを不安視する声が強まっている。今後中古スマホ価格は上昇しかねない要素について検討してみる。

資源の歴史的高騰がもたらすスマホ市場への影響とは

かれこれ2年以上続いた新型コロナウイルス禍で、人のリアルな交流は激減した。モノについても往来に支障が出ている。そんな中で、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が起きた。欧米や日本はロシアに対する経済制裁に乗り出しているが、この制裁がモノの動きをさらに悪化させている。たとえばコロナ禍以降上昇していた原油や金属など資源の価格は、ここにきて歴史的な高騰状態となっている。

1990年代中ばにインターネットが広く利用されるようになってから、世界の国や地域の結びつきは強まった。特に経済の分野ではそうした傾向が強く、いまでは世界のGDP(国内総生産)の1割以上を一国で占めるような超大国でも、自国だけでモノづくりを完結できる状況ではない。世界は複雑な生産の連携“サプライチェーン”に組み込まれている。スマートフォンやパソコンなどは、そうしたサプライチェーンのなかで生み出される典型的な工業製品でもある。

たとえば、米国のアップルやグーグルといった企業がスマホを開発して仕様を決めたとしても、日本やその他の国の企業が生産する液晶やバッテリー、米国メーカーなどの半導体などが使用される。これらの部品も、製造場所は往々にしてメーカー本社のある国以外の“どこか”だ。さらにそうした部品を集めて製品を組み立てるのだが、この作業は労働力の安価な“どこか”で行われる。スマホの場合は圧倒的に中国が多いが、東南アジアや東欧などのケースもある。コロナ禍やウクライナ侵攻は、このサプライチェーンの稼働に大きな痛手となる。すでに半導体不足などでさまざまな工業製品の生産や流通に支障がでているが、スマホについても新品の生産は直接的な影響を受けている。

円安、物価上昇に伴う中古スマホ市場への影響

では、中古はどうか。日本の中古スマホは、国内で法人などから引き取られたものが商社などを通じて海外に輸出され、それらを逆輸入したものが一定数流通している。これらについては、国際的な新品不足で中古の需要が増加れば、おのずと品薄になる。逆輸入しようにも数が集まらず価格も上昇する、といった事態がありえるだろう。
 ウクライナ侵攻に伴うロシア制裁で、物流が分断されるエリアも広がる。日本にいるとわかりにくいが、ロシアに対しては世界が一致団結して制裁の包囲網を築けているわけではない。たとえば2000年代以降に著しい経済発展を遂げたBRICs (ブリックス)と呼ばれる国々がある。これはロシアのほか、中国、インド、ブラジルの4カ国、さらに南アフリカを加えた5カ国を指す場合もあるが、これらの国々はロシア制裁に慎重な姿勢を示している。東南アジアでもベトナムやラオスなどはロシア制裁に慎重で、ASEAN(東南アジア諸国連合)としてのロシア制裁は決議できていない。物流の分断はサプライチェーンの分断を意味するが、根底には国家間の分断がある。
 国家間の足並みは揃っておらず、しかし一方で欧米のロシアに対する制裁圧力は強い。対立の広まりは、国家間の分断を深める。国家間の人やモノの動きは今後一段と絞られる可能性もある。海外からの中古スマホ輸入そのものも一定の制約を受けかねない。

 そんな事情で国内の中古スマホが減少し、新品も潤沢に供給されないとなれば、国内の中古価格もおのずと上昇する。中古スマホはスマホの買い替えで発生することを考えると、新品が減ることも中古の減少につながる。国内のスマホの品薄に備え、大手キャリアも含めたスマホの囲い込みや争奪戦が始まろうとしている、といっても過言ではない。
 まだまだ全体の5~7%程度とされる日本の中古スマホだが、市場は順調に拡大してきた。キャリアによる端末購入補助がなくなるなかで、新品の実勢価格が大幅に上がっていることも追い風となっている。
 しかし、ここにきてキャリアショップもオンライン限定ではあるが、認定中古スマホの販売を開始した。まさに中古スマホが注目されている証拠であり、中古スマホ市場が伸びる要因の一つと言える。反面、中古品の供給、流通のバランスが変わる可能性もある。市場を守り、維持・発展させるためにも、既存の中古スマホを扱う事業者の力量が問われる。いわばこれからが本番なのである。

中古スマホ業界の転換期に入るといっても過言でもない。

ニューズドテックでは、毎月2本のペースで中古スマホ市場に纏わるコラムを掲載していく。次回は欧米へ進みつつある、スマホの修理の権利について考えてみる。

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この記事を書いた人

新品市場と中古市場のバランスに面白みを感じてこれまで15年以上も中古市場に関わるものの、唯一スマホ業界だけが中古の成長に遅れを感じている。ニューズドテックが掲げるミッション「1.5市場の未来を拓く」に魅せられて、スマホ業界、敷いてはデバイス業界を盛り上げたいと思いニューズドテックにジョインした中古スマホ業界を俯瞰的にみる人物の一人。